デパートを発明した夫婦~世界初のデパート ボン・マルシェ


デパートを発明した夫婦 (講談社現代新書)

予想していたより読み応えがありました。たんにデパートの始まりだけでなく、ブシコー夫妻の博愛主義がやがて社員への福利厚生へと発展するのは感動ものでした。もしボン・マルシェが登場するのが遅かったら、今では当たり前になっている会社の福利厚生は、もう少しあとになっていたかもと、思うほどでした。

それにしてもデパートって初めは高級志向じゃなくて、今のスーパーマーケットのように、薄利多売をウリにしたお店だったんですね。おもなターゲットはプチブルジョワ。労働者ほどまずしくはないけど、家事は奥さまがこなしているような家庭。メイドがひとりいるかいないかを目安に考えればわかりやすいです。
ブシコー氏はただ物を売るだけではなく、店そのものをアトラクション化して、化粧室や読書室を作りました。何も買わなくても大歓迎にしたのが、当時からすると非常に画期的。いわゆる、入店退店自由が大原則。
これも現在からすると当たり前。けど当時は一度店(個人商店)に入ったら、買うまで出してもらえないというのが常識で、うすぐらい店内では店主とのかけひきで、買い物するのも大変だったとか。

あと流行を作りながらも、売れ残ってしまいそうな商品を片付けるために、大バーゲンを作り出したのも氏です。在庫を持たず、サイクルを早めて薄利多売にしたほうが、利益が大きいから。

通販が店舗の五倍以上もの売上げがあったのも驚き。世界中から注文が毎日何千とあったっていうんですから、当時の活況ぶりを想像……するも、コンピューターのない事務作業ってどんな風だったんだろ?

ほかにもいろいろボン・マルシェに関する話が満載で、店を立て替えたその規模がすごい。まるでパリの街にでっかい要塞があるみたいで、繁盛振りがうかがえます。
イラストや広告も掲載されていて、見るだけでも楽しい一冊。

ちなみに本書が発行されたのが1991年。バブル真っ盛りのころ。だからデパートは一種のステイタスシンボルとして、現代にも通用するとあるのですが、2009年の現在は残念ながら、以前のような活気はないと、個人的には思います。
パソコンとインターネットの登場によって時代が変わってしまって、デパートから始まった(と本書でいわれている)大衆消費社会は今後、どうなっていくんでしょうか……。