英国人捕虜が見た大東亜戦争下の日本人―知られざる日本軍捕虜収容所の真実


英国人捕虜が見た大東亜戦争下の日本人―知られざる日本軍捕虜収容所の真実

第17章 日出づる国へ――北九州市門司
第18章 大森捕虜収容所――大田区平和島
第19章 ビーチの仕事――品川区勝島
第22章 小名木川――江東区北砂(小名木川駅)
第23章 太る隅田川――荒川区南千住(隅田川駅)
第24章 芝浦――港区海岸(日の出埠頭、芝浦埠頭)
第33章 川崎の地獄――川崎市(空襲)

半年以上前に読了後、感想を投稿しようと思っていてすっかり忘れてました。なので覚えていることを。

タイトルの通り英国人捕虜、しかも日本で!!!
これだけで読む価値あります。そして著者のクラーク氏の緻密なイラストが当時の日本をユーモラスに描いた貴重な一冊でした。クラーク氏のほかにも捕虜はいましたが、こうして記録されている内容を読んだのは初めて。

日本に送られる前に台湾で捕虜生活をしていたのですが、そこでは虫とネズミとの戦い。ネズミが食べたあとの米って想像するだけで食べたくない。でもそれを食べないと餓死するから、食べるしか選択がなく労働に耐えられない。常に空腹のために食料のことが中心になって物事が動きます。
そして東京の大森収容所へと送られ、そこでの日々が語られます。
やはりもっとも印象的だったのが、駅での強制労働だった荷物運びの盗み。もちろん見つかればただではすみません。でも飢えている捕虜にしてみれば死活問題。あらゆる手口を考案して、初めは下手くそだったクラーク氏は盗みの上級者になります。それがうまくいっている間は体重が増えて健康な肉体にもどったものの、次に海岸での労働は楽だったにもかかわらず盗み出せる食料がない……。また痩せ細ってしまいます。
同じ捕虜でも収容所によって格差が激しく、運が悪い捕虜たちは飢えと劣悪な環境で亡くなりました。クラーク氏は幸い、日本の本土へ移送されて命拾いしたようです。そのまま台湾に残っていたらどうなっていたのか。

捕虜生活で一番楽しかった語りが、クリスマスのシンデレラ劇。ふだんは厳しい日本人も、この日は捕虜たちの楽しみに手助けしました。男ばかりの劇だからシンデレラも女装。それが笑いを誘ったのはいうまでもなく。

日本そのものが戦争で貧しくなってしまい、捕虜だけでなく日本人も飢えていました。
空襲で東京の街は瓦礫になり、終戦。捕虜たちは戦勝で陽気に残りの日を収容所で過ごします。
その描写も興味深い内容たっぷりで、英国人から見た日本の姿が率直に語られています。窃盗を冒険と言ったり、英国人らしいユーモアが散見され、重い内容もすらすら読めました。小難しい表現がなく翻訳文が読みやすいのも良かった点。唯一の不満は、なぜか横書きで少し読みづらくて残念でした。