傭兵の二千年史


傭兵の二千年史 (講談社現代新書)

が傭兵っていえば、現在でも職業のひとつとして知られています、これを読めばなぜ彼らが必要とされたのがかよくわかります。

古代ギリシヤやローマ時代から19世紀まで一貫しているのは、「兵役をいやがる市民の代わりとして、戦地で戦う」ということ。そもそも兵役は古代ローマでは志願兵だったのが、貨幣経済の発達により貧富の差が大きくなるにつれ、お金のある層が代わりに戦場へ行ってくれる兵士たちを、お金で買ったのが発端。
そして中世ヨーロッパでは、君主たちが常時軍隊を養うにはあまりにも財源を食うため、戦時のみ傭兵を雇うのが主流になっていきます。傭兵はもともと財産のない貴族の次男以降や、農村で食い詰めた男たちだものだから、戦争がないときは給料もないので、略奪をするように。だから、傭兵はあちらこちらの君主を渡り歩いて、戦場で戦って金を得ました。
しかしせっかく稼いだ金を飲む打つ買うという、俗悪三拍子であっという間に消えてしまうのだから、かなり刹那的な生き方。だからといって、君主たちは自国の軍隊を持つような金銭的余裕はない。
やがてルイ14世が王国軍を擁するようになると、傭兵はひとりの君主につかえるように。あちらこちら渡り歩き、略奪していた自由な傭兵は減っていきます。そしてフランス革命を経て、「国家意識」の誕生とともに国民の徴兵制度が始まると、傭兵の価値がさがって衰退していくという……そんな内容でした。

スイスが傭兵産業が盛んだったのは知らなかったし、南部ドイツから発生したランツクネヒトという傭兵集団もそう。興味深いのは、戦争がなくなると彼らの仕事がなくなるから、雇用期間を伸ばすため、ずるずると戦争を故意に伸ばすということ。なくなったら略奪が始まるから、庶民もそのほうがいいっていうのが、現代ではありえない感覚です。
でもまあ、近代兵器が登場するまえの戦争は、兵士や軍人たちがするものと決まっているから、庶民からしてみれば、現代ほど恐れる事態ではなかったのかも。武器は弓や槍、マスケット銃、大砲が主流でしたからね。

あと、傭兵にされるために拉致されて、無理やり戦場に連れて行かれるエピソードはかなりひどい。貧しさから志願するのしない、の以前の問題。とくにドイツがひどかったそうです。

ほかにも歴史的流れにそって、いろんなエピソードが盛り込まれています。新書にしては内容がかなり濃くて読みやすい内容。当時の君主と傭兵隊長たちの駆け引きが読んでいて面白かったです。
西洋史に興味があれば、とてもおすすめの一冊です。