やんごとなき姫君たちのトイレ・寝室他

 
やんごとなき姫君たちのトイレ 「やんごとなき姫君」シリーズ (角川文庫)

蔵書の整理をしていて見つけたのでシリーズを再読。かなり昔に資料になればいいかな、と購入した記憶があります。
今、読んでみたら内容が歴史版女性週刊誌っぽくて、雑学レベル。扱っている内容も体系がバラバラで半端だから、資料には向いてないです。歴史に少し興味があって、貴族や中世の裏話をちょっと知りたいな~レベルだったらいいかも。あと文章の末尾にやたら『……』や『?』があるのもゴシップっぽい下世話な書き方で、断定はしてないので信ぴょう性もまずまずといったところ。
女教皇ヨハンナの話も史実を教会がもみ消した、というエピソードもあったぐらいだから。(彼女は架空の人物。まず修道院で女とばれないほうがおかしいし)

そのなかで印象的だったエピソードをいくつか紹介。

トイレ編で頻繁に登場するルイ14世は、主治医であった侍医ダカンの勧めで、歯を全て抜きました。理由は歯の細菌が病を引き起こす万病の元だと信じたため。
当時はまだ入れ歯もなく、王は亡くなるまで食事を流し込んで食べることになり、胃が消化不良を起こして始終、腹を下していました。だからしょっちゅう当時の穴あき型の椅子――トイレに座って、謁見したり政務を執ったりしていたとか。王はいつも下痢だから体臭もひどく、香水が発達したそうです。
いくらなんでもすべての歯を抜くとはやりすぎなのはもちろん、周囲は止めなかったのかと思ったけど、王は絶対だし意見できなかったのかも……。

18世紀の美食家貴族、グリモ。とにかく晩餐会や午餐会に凝っていて、あるときは葬儀に模した晩餐会をしたことで社交界で大絶賛されました。まず死亡通知そっくりの招待状を客に送り、いくつかの関門を過ぎて、ようやく大広間へ入ると、テーブルの代わりに棺台が。周囲は黒い布に覆われ、燭台はドクロ。給仕は葬儀屋の扮装。そしてデザートのころになると、一転してぱっと灯りがついて、花の壁紙に小鳥に牧童姿の給仕に変身。なんとも粋な演出です。
そんなグリモもフランス革命の災いは逃れられず、貧乏になるも、なんとかタダで美食をするために考えたのは、美食評論家となって、雑誌を出すこと。その食通年鑑で評価が高かったレストランは繁盛するけど、酷評されたら店がつぶれてしまうから、店主たちはグリモへ高価な食材を贈っていたとか。つまり賄賂。けれど、複数人レビューのはずが、じつはグリモひとりだけで試食していたのがバレてしまい、郊外の城へ引きこもってしまったそうです。18世紀にも海原雄山みたいな自称食通がいたのか、とおかしかった。

騎士道の始まりは、あるじの奥さまとのプラトニックな宮廷愛が発祥。もちろんプラトニックだから肉体関係はないことになってはいるけども、夫が戦争で長期にわたって城を空けたりしているものだから、心細い奥さまはつい……というのが多かったそうです。
あと騎士といえばトーナメント。しかし実際はかなり野蛮なもの。まず行われる村で告知があって、ぞくぞくと騎士たちが集結。擬似戦争となって、鎧や兜に身を包んだ騎士たちが馬に乗って槍で突撃!それを何度もラッパの合図で繰り返しているあいだ、競技場は社交場にもなります。娘の夫にふさわしそうな騎士を見つけ出すためだとか。そして屋台や吟遊詩人等の見世物も集まって、数日間、お祭り騒ぎ。
そして審判者が優秀な騎士を選ぶのですが、賞品はいまひとつ。だけど、模擬とはいえ戦争なので、奪った武器や、捕虜の身代金でかなり稼ぐこともできたようです。日本では想像しにくい制度。